最近は、カフェのメニューにスペシャルティコーヒーを見かけることが多くなりました。豆の販売もされていますし、スペシャルティコーヒー専門店もあるので愛飲されている方も多いと思います。
スペシャルティコーヒーというと、何か特別な感じが伝わってきますよね。でもスペシャルティコーヒー以外にも高品質なコーヒーはたくさんあります。
それらの高品質なコーヒー豆とスペシャルティコーヒーはどこが違うのか、疑問に思ったことはありませんか。スペシャルティコーヒーはどんなコーヒーなのか、何故スペシャルと呼ばれるのか、その所以を辿ってみたいと思います。
スペシャルティコーヒーとは
スペシャルティコーヒーは、簡単にいうとひとつのカテゴリですが、その品質はコーヒー界最高峰です。どのようなコーヒーがこのカテゴリに入ることができるかというと
- 生産農園が明確で、生産から流通まで一貫して管理徹底されており
- ある一定の基準を満たした高品質のもの
という特徴があります。
このような特徴を持つスペシャルティコーヒーは、取引形態や品質の判定において、他のコーヒー豆と様々な違いがあります。
コーヒー豆の4つのランク
コーヒーピラミッドはご存知でしょうか。これは、コーヒー豆を流通量とグレードを基にランク付けし、図に表したものです。
この図によると下のランクから
- ローグレードコーヒー
- コモディティコーヒー
- プレミアムコーヒー
- スペシャルティコーヒー
という順番になります。
ピラミッドの頂点であるスペシャルティコーヒーは、最高品質で希少なコーヒー豆であることが分かりますね。
グレードのランク付けには、日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)や、カップオブエクセレンス(COE)のカップ評価による採点結果も基準になります。
ローグレードコーヒー
ローグレードコーヒーは、品質の低さから輸出されずに生産国で消費されることが多く、インスタントコーヒーや缶コーヒーの原料として使われます。
コモディティコーヒー
コモディティコーヒーは、世界で最も多く流通しているコーヒー豆です。ブレンドに使用たり、スーパーやネットで販売されている安価なコーヒー豆がこれにあたります。
価格は生産国の等級により「商品先物取引」で決められます。しかし大量のコーヒー豆を重量単位でまとめて取引するため、品質が不明瞭で生産地や生産者も把握できていません。
プレミアムコーヒー
プレミアムコーヒーは上から2番目のランクではありますが、1番目のスペシャルティコーヒーに負けず劣らずの上質なコーヒー豆です。SCAJのカップ評価によってはスペシャルティコーヒーの基準をクリアし、プレミアムコーヒーだけどスペシャルティコーヒーでもある、という状況にもなり得ます。
銘柄としてはブルーマウンテンやエメラルドマウンテン、キリマンジャロなどがあります。
プレミアムコーヒーは品種や産地のブランド性を大切にしており、生産農園はもちろんのこと、豆の生産過程から流通まできちんと管理されています。
スペシャルティコーヒー
プレミアムコーヒーをしのぐ品質を誇るスペシャルティコーヒーは、品種や生産農園、生産過程から流通に至るまでの管理が徹底している点はプレミアムコーヒーと共通しています。
しかしながら、コーヒーに対する概念に大きな違いがあります。
プレミアムコーヒーがブランド性を大切にするのに対して、スペシャルティコーヒーは種子の段階からカップに注がれるまで一貫した管理を行い、最終的に消費者においしいと感じてもらうことを大切にしているのです。
つまり産地や品種にこだわるのではなく、生産環境を整えることでおいしいコーヒーの提供を持続させることに重きをおいています。
結果的に品質や生産・流通過程においてプレミアムコーヒーとスペシャルティコーヒーはよく似ていますが、目指す考え方が違うということになります。
スペシャルティコーヒーの概念には、誕生当時のコーヒー業界の状況が大きく影響しています。
スペシャルティコーヒー誕生の背景
スペシャルティコーヒーは1980年代。アメリカスペシャルティコーヒー協会(SCAA)の設立によって誕生します。
当時のコーヒー市場は大量生産による値崩れが起こり、コーヒー農園は苦しい経営を強いられていました。一方でコーヒー豆の品質も悪くなり、それは消費者にとって喜ばしくない状況でした。
この悪い流れを断ち切り、農園の利益を守りながら消費者にも満足してもらい、何よりコーヒーの価値を取り戻すために生まれたのがスペシャルティコーヒーです。
スペシャルティコーヒーの定義
日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)では、消費者が持つカップに満たされたコーヒーが素晴らしいものであるためには。種子の段階から一貫した体制・工程・品質管理の徹底が必須であるとしています。
またそのようにして作られたコーヒー豆が、生産国から消費国まで末永く発展し続けるために、サステナビリティ(持続可能性)とトレイサビリティ(追跡可能性)の観念が重要であるとしています。
スペシャルティコーヒーにおけるサステナビリティは。素晴らしいコーヒーをずっと作り続けられるように、生産者側の利益や労働環境を整えることです。トレイサビリティは。どこの誰がどのように生産し、どのように流通させたかを明確にし、いつでも追跡できるようにすることで商品の安全性を高めることです。
これによりスペシャルティコーヒーは、生産者も消費者も関わる全ての人が幸せを享受きるようなコーヒーになれるのです。
スペシャルティコーヒーのカップ評価
安心安全な体制のもとで作られたコーヒーもおいしくなければ意味がありません。スペシャルティコーヒーは、クオリティの判定をするためにカップ評価(テイスティング)を行います。
Qグレーダーと呼ばれるカッピングのスペシャリストが3名でカップ評価を行い、アメリカスペシャルティコーヒー協会(SCAA)の方式に沿って採点をします。
その結果80点以上を取得すると、スペシャルティコーヒーとして認められるのです。カップ評価では、以下の7項目について判定されます。
- カップ・クオリティのきれいさ
- 甘さ
- 酸味の特徴評価
- 口に含んだ質感
- 風味特性・風味のプロフィール
- 後味の印象度
- バランス
※日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)HPより引用
カップオブエクセレンスとは
スペシャルティコーヒーに認定されるとその品質はプロが認めた最高品質ということになりますが、さらにその中からトップを選ぶコンテストがあります。それがカップオブエクセレンスです。
カップオブエクセレンスはアメリカで毎年開催されており、優勝したコーヒー豆はオークションで取引されます。まさにコーヒーピラミッドの頂点に君臨するコーヒーということになりますね。
スペシャルティコーヒーの魅力
あまり深く考えずに、ただおいしいからと選んでいたスペシャルティコーヒー。でもそれは、コーヒーの価値を量から質へと方向転換してくれた先人の尽力の賜物でした。
そして飲むたびに、コーヒー作りに関わったどこかの誰かも幸せにしていると思わせてくれるコーヒーです。スペシャルティコーヒーはおいしさはもちろんのこと、カップに注がれるまでの過程もスペシャルなコーヒーでした。
スペシャルティコーヒーはトレイサビリティにより生産農園が明記されています。その生産国や生産者、買い付けをした業者さんなどに思いを巡らせながら、最高レベルの風味特性を楽しんでくださいね。
文:Miwa